【コラム】片隅にて / 佐藤香展「青」
「片隅にて」という絵が、部屋の隅っこ、というかどこが隅なのかもわからないような部屋の隅に置いてあった。
キャプションをつけているということは、何かしらの展示会に出展したもので、本人は気にいっていたのだと思う。香さんの絵では珍しく微笑んだ女性の絵だ。
こんな感じの人物画クロッキーが文字通り五万とあるのだけど、ご兄弟の家で引き取ってくださるようで、一安心。
「香さん」は男性で、名前からよく展示会なんかで女性かと勘違いされることが多かったらいしい。確かに女性的な絵を描く人だった。
もともとは、うちの常連だった久郷さんという方が連れてきてくれたのが出会ったきっかけで、久郷さんが地元に帰ってからも、一人でほぼ毎日きてくれていた大常連。
そんな香さんが亡くなってしまったのは、昨年の6月ごろだったと思う。
そろそろ一年近く経つので、改めてこの店を支えてくれた大常連というか大先生に感謝を述べてみたいと思う。
おそらく、というか確実に俺が画廊をやることになったきっかけは佐藤香さんにある。
曖昧な知識でなんとなくアート青年を気取っていた俺に、本物のアートを教えてくれたのが香さんで、年に400回以上美術館に行く香さんはその度にフライヤーを持って帰ってきてくれるから旧チャチャは香さんのフライヤーだらけだった。
(新井くんの絵!)
そんな香さんが、結局俺が再開させることになった京葉画廊の事を話してたのもなんとなく記憶にあるし、24歳くらいの俺がそこの再開なんてできたら良いよね〜とかなんとか言ってたような気がする。
結局のところ、人間は誰かの意思で生かされ、やるべきことを与えられているのだと改めて思う。
というか、誰かの意思を汲み取って、勝手に解釈して人生を遂行していくのが最も素直な生き方なのかもしれないな、とか。
まあ、なんでもいいんだけど、とにかく俺は香さんの絵と深沢幸雄さんの絵が同居する空間を作らせてもらった。
京葉画廊はビルの大家さんが寛大すぎて、ひたすら恐縮しっぱなしなんだけども、それぐらいの方が引き締まってやる気が出るのが俺の性格だから非常に良い。
当然、香さんにも遊びに来て貰いたかったけど、多分生きてたら作品出したがらなかっただろうな。大先生の作品と同居なんてできない、とか言って。
俺は、曖昧な知識のアート青年なので、勝手に飾らせていただきます。
ありがとうございます。
このブログは香さんが亡くなった後にチャチャでやってた佐藤香展に合わせて書こうと思っていた下書きに加筆したものです。
その後、俺も俺で色々バタバタで書けなかったのを今更書いてみました。
佐藤香展はチャチャ常設なのでアサヒと芋焼酎片手にご覧ください。
それではまた!